この記事では、産後2週間ごろに涙が止まらなくなったり、ささいなことでイライラしてしまったりする理由と、その時期を楽にやり過ごすためにできることをお伝えします。
深夜3時、赤ちゃんを抱いたまま涙が出てくる
深夜、授乳を終えても泣き止まないわが子を抱いて、暗いリビングに立ち尽くしたまま、気づいたら自分の頬にも涙が伝っていた。産後まもない時期に、そんな夜を過ごしている方は少なくないかもしれません。どうして泣いているのか自分でも分からなくて、余計に心細くなる。眠りたいのに眠れない、体は限界なのに気持ちだけが張りつめている。そんな状態が、もう何日も続いていませんか。
こんな瞬間に、心当たりはありませんか。夫の「昼間、少しは寝られた?」という悪気のない一言に、涙とともに強い苛立ちがこみ上げてくる時。うまくおっぱいを飲ませられなかっただけで、「私はこの子の母親なのに」と自分を責めてしまう時。数分前まで泣きたいほど疲れていたのに、赤ちゃんの寝顔を見た瞬間、今度は申し訳なさで胸がいっぱいになる時。感情が上へ下へと大きく揺れて、自分でもついていけない。
出産という大仕事を終えたばかりの体で、一日に何度も授乳し、おむつを替え、抱っこを続けて、本当によく持ちこたえていらっしゃいますね。「イライラしてしまう」「かわいいと思えない瞬間がある」と感じることは、あなたの愛情が足りないからではありません。それだけ休みなく気を張り、この子を守ろうとしているからこそ、心と体が悲鳴を上げているのです。
そしてその悲鳴を、「心配をかけたくない」「母親失格だと思われたくない」と、夫にも実家のお母さんにも言えないまま、一人で飲み込んでいる方も多いのではないでしょうか。誰かに「つらい」と言ってしまいたいのに、口にした瞬間に涙が止まらなくなりそうで、飲み込むしかない。その我慢もまた、心をすり減らしていきます。
そのイライラ、母親に向いていないからだと思っていませんか
産後にわけもなく涙が出たり、些細なことでイライラしたりするのは、あなたの性格や母親としての適性の問題ではないと言われています。出産のあと、体の中では女性ホルモンの量が急激に減り、その変化に心のバランスが追いつかない時期がしばらく続きます。そこに、細切れの睡眠と、昼夜の区別のない生活が重なる。心が不安定になる条件が、これ以上ないほどそろってしまっているのです。産後1ヶ月以内に、気持ちの落ち込みや不安定さを経験する人は、とても多いとされています。
以前、あるママが当時を振り返って話してくれたことがあります。産後2週間ごろ、夫が仕事から帰ってきて「今日はどうだった?」と聞いた、ただそれだけのことで涙が止まらなくなり、自分でも驚いたそうです。「悲しいわけでも怒っているわけでもないのに、蛇口が壊れたみたいに涙が出て、こんな私で子どもを育てられるのかと怖くなった」と、少し声を落として話してくれたのが忘れられません。その方は後日、「あの涙は弱さじゃなくて、体が回復しようとしている途中のサインだったんだと、あとで分かって少し楽になった」とも話していました。
こうした苦しさの背景には、いくつかの「思い込みのクセ」が隠れていることもあります。ひとつは、うまくできなかった一場面を取り出して、「母親として全部だめだ」と広げてしまうクセです。授乳が思うようにいかなかった、泣き止ませられなかった。その一点だけで、自分の子育てのすべてに×をつけてしまってはいないでしょうか。本当にそう言い切れるだろうか、と一度立ち止まると、その日何度も抱き、何度もおむつを替えてきた自分は、勘定に入っていないことに気づくかもしれません。
もうひとつは、今のこの不安定さが、この先もずっと同じ濃さで続くと決めつけてしまうクセです。「一生、こんなふうに涙もろくて怒りっぽいままなのではないか」と、まだ来ていない未来まで先回りして絶望してしまう。けれど、ホルモンのバランスも、睡眠のリズムも、数週間から数ヶ月をかけて少しずつ整っていくと言われています。今がそのまま固定されるわけではないのです。
例えば、まだ起きていないことまで先回りして心配してしまう傾向を持つ人ほど、産後の一時的な涙もろさを「この子の将来にまで響くのでは」と大きく受け取り、今日うまく笑いかけられなかったことと、この子の性格とを、つなげて考えてしまいやすいのです。もし心当たりがあるなら、それはあなたが真剣に向き合っているからこそのクセで、今はその糸を少しだけゆるめてみてもいいのかもしれません。
同じ夜、同じように泣いている人がいます
産後まもない時期に気持ちが大きく揺れるのは、多くの人が通る道だと言われています。今この瞬間にも、別の部屋で授乳しながら理由の分からない涙をこぼし、「私だけがうまくできていない」と感じているママが、きっと何人もいます。その夜は、あなた一人だけのものではありません。
退院してすぐ笑顔で赤ちゃんを抱く写真を見ると、自分だけがうまくやれていない気がするかもしれません。けれど、その一枚の外側にある夜中の涙までは、たいてい写っていないものです。人の「見えている部分」と、自分の「全部」を比べなくて大丈夫です。
そして、泣いている赤ちゃんは、あなたを責めているわけではありません。まだ言葉を持たないこの子にとって、泣くことは「なんだか落ち着かない」を伝える、たったひとつの方法です。その意味がすぐに分からなくても、あなたが応えようとし続けていること自体が、ちゃんと届いています。
この2週間をやり過ごすために、できることだけ挙げてみませんか
もし試せそうなら、「今は回復の途中だから、いつも通りにできなくて当たり前」と、一日の初めに自分へ言っておく方法があります。できなかったことを数えるのではなく、「授乳できた」「おむつを替えた」と、できたことを指折り数えるほうへ意識を向けてみる。それだけで、自分を責める回数が少しずつ減っていきます。
つらい気持ちが強い時は、赤ちゃんを安全な場所にそっと寝かせて、別の部屋で数分だけ深呼吸する、という方法もあります。少しの間そばを離れることは、放置ではありません。あなたが落ち着きを取り戻すための時間で、結果として、穏やかな関わりに戻りやすくなります。
夫には「話を聞いて」ではなく、「夜中の授乳のあと、げっぷだけお願い」「朝の30分だけ代わって」と、具体的な形で頼んでみるのもひとつです。人は、はっきり形にして頼まれたことのほうが動きやすいものです。実家や自治体の産後ケア、助産師さんの訪問も、「少し休みたいから」という理由だけで使っていいのです。
それでも涙が止まらない日が続いたり、眠れる時なのに眠れない、食べられない、といった状態が2週間以上続く時は、我慢して乗り切ろうとしなくて大丈夫です。産婦人科や自治体の窓口に、電話一本でいいので状況を伝えてみてください。早めに相談することは、弱さではなく、あなたと赤ちゃんを守る行動です。
今日も赤ちゃんと朝を迎えられた、それで十分です
出産を終えたばかりの体で、眠れない夜を越えてきたあなたは、それだけで大きな仕事をやり遂げています。無理に「母親らしく」しようと自分を追い立てなくて大丈夫です。涙が出た時間も、イライラした時間も、あなたが冷たいからではなく、ただ体が回復の途中にあるサインです。
うまく笑えない日があっても、涙が止まらない日があっても、あなたと赤ちゃんは、今日という一日をちゃんと越えました。今は、それで十分です。明日も無理せず、あなたのペースで大丈夫です。
